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ランス・アームストロングの強さの秘密

 ランス・アームストロングが、いかにチャンピオンであり続けたことは、サイエンスの視点からも説明されようとしている。
 運動生理学の世界的権威であるアメリカ・テキサス大学コイル博士が、ランス個人について7年間にわたり追跡調査した研究報告(Edward F. Coyle,“Improved muscular efficiency displayed as Tour de France champion matures”, Journal of Applied Physiology, 98: 2191-2196, 2005年)によれば、彼が癌に冒された期間を含め、体力的技術的には非常に顕著な変化があったと指摘されている。
 ランスは自らのパフォーマンスを維持すべく、加齢にも応じたトレーニングの工夫により、栄養エネルギーを筋の出力に変換する効率を9%近く高め、減量による効果も加わって、実に18%以上ものパワーアップを達成したと言われている(図1図2Coyle, 2005年より作図)。コイル博士によれば、その背景には筋線維組成の変化があったと指摘されている。つまり、高い筋力を発揮する速筋線維(タイプU)が減少し、その代わりにより持久力の高い遅筋線維(タイプT)が増加したことが明らかになった。
 ランスは、実に過去7年間で遅筋線維の割合を60%から80%まで変化させた。また、コイル博士のラボで行ったタイムトライアル時のペダル回転数(ケイデンス)にも変化が見られ、当初はランスは好んで85回転/分で行っていたのが、近年では105-110回転/分までシフトしているようだ。これは、パフォーマンスを維持するために、より効率よく筋を使い、ペダリング技術を高めた結果を示している。

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LSDの功罪〜トライアスリートにとってLSDはなぜ必要か?

 トライアスリートにとって、「LSD(Long Slow Distance)」がトレーニングの定番として多くの恩恵をもたらしてきたことは疑う余地もない。ましてや、アイアンマンなどのロングのレースにとってはトレーニングの黄金律とも言えるだろう。そのトレーニングの狙いは、長い距離をゆっくり走ることによって、ランニングエコノミー(エネルギー効率)を高め、長距離に耐えうる筋や関節を作ることなどにある。
 事実、マラソンのフィニッシュタイム(2時間20分〜5時間)は、一回のトレーニングで走る距離が長いほど短縮される傾向にあることが古くから知られている(Haganら、1981年)。これは、マラソンに限らず、10〜90キロのレースにおいても共通している(Scrimgeourら、1986年)。週当たりに100キロ以上走るグループでは、それ以下しか走らないグループと比較して、最大酸素摂取量には違いがないものの、最大走行スピードが高かった。これは、より長い距離を走る者ではランニングエコノミーが優れていることに理由があると考えられ、LSDなどのトレーニングが貢献していることを示している。
 ところが、LSDには落とし穴がある。まずは図1(Billatら、2001年より作図)を見ていただきたい。これは、フランスの研究者らが世界トップレベルのマラソン選手(フィニッシュタイム=2時間11分以下)のトレーニング内容について調査した結果の一部だ(Billatら、2001年)。ご覧のように、彼らの行うトレーニングは、その約4分の3が実際のレースにおけるペースより低い強度で行われている。つまり、週当たり200キロ以上にも及ぶトレーニングの大部分はAT以下のエアロビックペースだと言える。
 しかし、世界トップレベルのマラソンナーのトレーニングの大部分がエアロビックペースで行われているとはいえ、彼らよりパフォーマンスの劣る選手のトレーニングペースと比較するとその違いが明らかになる。図1に示されるように世界のトップ選手はトレーニングの4分の1弱を実際のレースペースより高い強度で行っているが、パフォーマンスの劣る選手ではその比率はさらに小さくなる(約5分の1)。世界のトップ選手のほうが明らかに高強度で行うトレーニング量が多いのだ。つまり、LSDのようなエアロビックペースのみならず、レースペースもしくはそれ以上のペースでのトレーニングの比重がパフォーマンス向上のためには重要となる。事実、マラソンのパフォーマンスは、トレーニング時間よりもトレーニング強度とより高い相関関係にある(Haganら、1987年)。また、LSDなどのようなエアロビックペースのトレーニングは、ビギナーやトレーニングを始めて日の浅い人にとっては大きな効果をもたらすが、すでにトレーニングを長年実施している人にとってはパフォーマンス向上への貢献が少ないばかりか、障害や怪我の原因にもなることも指摘されている(LaursenとJenkins、2002年)。
 これまで、ゆっくり長く行うLSDによって脂肪の利用を高めることが、長時間に及ぶトライアスロンにとって必要であると認識されることが多かった。しかし、ゆっくり行う運動が必ずしも高強度の運動と比較してより多くの脂肪を燃焼させるとは限らない。図2(Rosenbergerら、2005年より作図)からもわかるように、8キロランにおけるエネルギー消費量を走行スピードの違いにより比較すると、総エネルギー消費量(左図)の違いは明らかに糖質の消費量(右図)の違いによってのみ現れ、脂肪の消費量にはほとんど差が見られない(Rosenbergerら、2005年)。つまり、脂肪を使うことを目的に行うならば、スローペースのLSDでなくても高強度のトレーニングでも可能であることを示している。
 また、トライアスロンは到達した距離を競うのではなく、単位時間当たりの距離、つまりスピードを競うスポーツだ。よって、より高いスピードを維持するためにはできるだけ多くのエネルギーをできるだけ短い時間に動員することが重要で、脂肪を利用するよりも圧倒的にエネルギー供給スピードの高い糖質を利用することのほうが有利である。たとえ競技時間が8時間から17時間におよぶアイアンマンであっても一秒でも早くゴールしたいものだ。しかも、多くのトライアスリートはLSDにおけるスピードより高いレベルでレースを行っていることも事実だ。
 LSDばかり行っていても、ある水準以上のパフォーマンスの向上は期待できない。LSDは、あくまでランニング(あるいはバイク)エコノミーを高め、障害や怪我を予防する目的で行うからこそ、その絶大なる効果を発揮する。そして、それにより高い強度のトレーニングを加えることにより糖質利用効率が増大し、パワーやATなどの改善とともにパフォーマンスがアップするのだ。
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バイク筋とラン筋を使い分けてランのパフォーマンスアップ!

 昨年のハワイ・アイアンマン。ドイツのノーマン・スタドラーはバイクで圧倒的な強さを見せ、ランで逃げ切って優勝した。ドイツの多くのトップ選手はそのバイクパフォーマンスの高いことで有名だ。しかし、27年間のハワイ・アイアンマンの歴史が証明するように、アイアンマンはバイクでは勝てない。これまでの合計28レースのうち、実に22レースはランで勝負が決まっている(Triathlete, supplement, 2005年)。これが、「アイアンマンの本当の始まりはランから」といわれる所以だ。
 ノーマンがバイクでのリードを維持したまま優勝できたのは、単にバイクにおける2位以下との差がどうやっても追いつかれないほど十分に大きいものだったからではない。1995年のハワイ・アイアンマンで同じくドイツのトーマス・ヘルリーゲルがマーク・アレンにバイクで15分の差をつけてリードしていたものの、最後はランで抜かれ勝利を逃した話は今でも記憶に新しい。つまり、昨年のノーマンの勝利は、ランでもそのリードを維持できるほどの十分な走力こそがあったからに他ならならず、ハワイ・アイアンマンの歴史が証明するように、やはり勝負の行方はラン次第ということが言える。
 ただ、今後はノーマンのような「ライド・ファースト&ラン・ストロング」のスタイル、バイクで速く走れ、ランでも強いことが今後のハワイ・アイアンマンでの勝利の公式になるだろう。もっとも、一般のエイジグルーパーではまだまだランでの挽回の可能性が大きいのは間違いない。
 トライアスロン、特にアイアンマンのランは決して速くない。最後のランスプリットがサブスリー。このタイムで走れるトライアスリートの数はほんの一握りだ。しかし、ローカルなマラソン大会でこのタイムで走る人はいくらでもいる。待った、待った!アイアンマンではランの前にスイムとバイクがあるではないか!と思われるかもしれないが、サブスリーといえども、それ自体は「トップ選手」の絶対スピードとしては決して速いとは言えない(もちろんアイアンマンでは至難の技だが)。ましてや、一般のトライアスリートのスピードとなると、もはやジョギングペースであることもまれではない。トライアスロン、特にアイアンマンのランでは速く走る必要がないのだ。
 つまり、何が言いたいかというと、トライアスリートに求められるランの能力とはスイムとバイクを終えた後にいかにコース全体にわたって一定のスピードで走り続けることができるかにある。トップ・トライアスリートではこの能力が高く、スイムとバイクの後でもランだけの場合にきわめて近いスピードで走りきることができる。一般のトライアスリートにとってもトレーニングによってこれらの特殊な能力をより高めることが重要となるだろう。
 このように考えると、トライアスロンのランはバイクの後でも、持ちうるランのスピードをいかに引き出せるかがカギと言える。トライアスロンがスイム、バイク、ランの順序であり続ける限り、いくらがんばってもランだけの場合より速く走ることができないのなら、ランのパフォーマンス自体を高めることに専念するよりも、バイクでいかにランへの影響を抑えるかを工夫するほうが優先されるはずだ。
 トライアスロンのランにおけるパフォーマンスは、必ずしもランの練習量や強度との掛け算では表されない。トライアスロンのラン・パフォーマンスを高める第一歩は実はバイクのレベルアップにあるのだ。バイクの練習量を増やす、質を高めるなどのトレーニングの改善は、バイクだけでなく、ランでのレベルアップをもたらすだろう。そして、加えて、バイクにおける筋の使い方やポジションの改善も大きくランのレベルアップに大きく貢献するのだ。
 ランで推進力を生む筋肉は大腿の後ろ側の筋、大腿二頭筋などのハムストリングスと大殿筋といった着地した脚を後方へ引き戻す作用をもつ筋肉である。前面の筋肉である大腿四頭筋は着地時の加重へ抗う作用が中心となり、推進力への貢献は最低限である(短距離では重要であるが)。それに対してバイクでの主動筋は大腿四頭筋である。
 バイクでは大腿四頭筋の活動量の増加がパワーの増大に関係している(Faria, “Applied Physiology of Cycling, 1984年)。特にペダリングの上死点から90度付近までのパワー発揮に貢献し、バイクにおける推進力の原動となる。ハムストリングスや大殿筋は下死点の手前でようやく動員される。急な坂道を登るときのように大きな力(トルク)を発揮しなければならない状況ではハムストリングスや大殿筋の貢献は大きいが、これらの筋群をすべての状況で使用することは、坂道でのペダリングが疲れやすいことからも大きなトルク発揮を要求される特別な状況以外は避けるべきだ。しかも、ランで主役となるこれらの筋群をバイクで酷使することは不適切だ。
 コンピュトレーナーを用いて評価すると、図1図2のようにポジションを変更するだけで、ピークトルクの現れるタイミングに変化が見られる。骨盤を寝かせ前傾を強めると(図1)、ピークトルクのタイミングがペダリング後半(120-150度付近)に現れることから、この角度ではハムストリングスや大殿筋が活発に活動していることがわかる。それに対し、骨盤を立て前傾を弱めると(図2)ピークトルクのタイミングが前方に現われ(90-100度付近)、大腿四頭筋の活動量が増し全体としてパワーも高くなる。
 バイクも脚、ランも脚で行う種目だ。高性能の脚筋を持つ必要があるのはよくわかる。しかし、「脚筋」と一言で言っても多種多様。それぞれの役割を持つ。幸運にもバイクはバイク専用、ランにはラン専用の筋があり、これらを使い分けることができる。実は、この使い分けができていないトライアスリートが多く、ランでの失速も大きい。逆に言うと、バイクとランでその本来の運動特性どおり筋の使い分けができれば間違いなくランでのパフォーマンスはアップする。ところが、これまでに知るところでは、実に多くのトライアスリートがランで使うべきハムストリングスと大殿筋をすでにバイクで酷使し、ランの始まりですでにランのための筋肉が疲れきっているケースが非常に多いようだ。
 バイクとランという両者とも脚を使うトライアスロンでは、バイク後の疲労状態であってもいかにランを走りきることができるかがレースでの結果を大きく左右するのは事実だ。しかし、これはバイクで疲労し切った筋肉の痛みや辛さにただ耐え抜いてランを走るといったような話ではなく、バイクとランでうまく筋肉を使い分けてランを力強くフィニッシュするということである。トライアスロンは拷問やマゾヒズムではない。人間の可能性に挑む知的で合理的なスポーツである。
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再考「ブリック・トレーニング」

 スイム、バイク、ランからなるトライアスロンは3種目を単に足し合わせた複合競技ではなく、これらを連続して行わなければならない唯一の競技だ。これこそがこのスポーツの醍醐味であり難しさの一つと言えるだろう。
 バイクからランへのトランジッション。これは、いつもトライアスリートが突き当たる壁であり、我々を最高の気分から失意のどん底へ落としめる魔力を放つ。十分なトレーニングを積んだもののいざ走り出してみると鉛のような足の重たさに愕然。ランだけのタイムはいいのにバイクの後になると呪縛されたかのようにかた無し。あれほどバイクで踏んだのに足の軽いこと軽いこと。多くのトライアスリートがこの予測不能な現実に苛まされている。やってみなくてはわからないのもトライアスロンの面白さ。でも、せっかくのトレーニングの結果がギャンブルのように運まかせに左右されるのはつまらない。
 実は、これまでにこの魔力の謎を解くべくサイエンスが踏み込むことはほとんどなかった。そんな中、エリートアスリートでありサイエンティストでもあるマシュー・ブリックが果敢に挑み、バイクからランへのトランジッションを克服するためのさまざまなトレーニングを生み出していった。1980年代、トライアスロン黎明期のことである。そして、彼の名前にちなみ、これらのトレーニングを「ブリック・トレーニング」と呼んだ(*注釈)。
 ブリック・トレーニング、つまりバイク−ラン・トランジッション・トレーニングは、バイクとランを連続して行う。冷蔵庫を開けたりシャワーを浴びたりすることなく、バイクを終えるや否やランシューズに足を入れ走り出す。今、改めてその価値が見直されているようだ(Triathlete、2005年8月号)。
 バイク−ラン・トランジッションに関する数少ない研究報告によると、直前にバイクを行ったラン(バイク−ラン:BR)では、同じ強度のランを連続して行うラン(ラン−ラン:RR)より、呼気量や呼吸筋の疲労が大きかったと示されている(Hueら、1999年、図1)。また、BRではRRと比較して、呼気量の増加が酸素摂取量の増加を大きく上回っていた(Hueら、2001年、図2)。これは、ラン直前のバイクでより多くの乳酸が生成され、その除去のために生じた二酸化炭素が直後のランでより多く排出されたことを示している。
 これらはバイク−ラン・トランジッションの生理的特性であり、パフォーマンスの制限因子になる可能性がある。また、BRはRRと比べて生体にとってより大きなストレスとなり、多くのストレスホルモン(アドレナリンなど)の分泌を促進する。したがって、レースで経験するこれらの生理的負担にあらかじめ適応しておくことがバイク−ラン・トランジッションをスムースにこなすカギとなる(Hueら、2000年)。
 また、前傾姿勢を長時間維持するバイクから直立姿勢に戻してランに移る際、バイオメカニクス(生体力学)上の適応も必要とされる。姿勢の変化への適応時間が長いほど、バイク後のランで思うように走れないもどかしさを体験することになるだろう。また、これによってバイク後のランの酸素摂取量が高くなり生理的負担が大きい(Hausswirthら、1997年、SleivertとWenger、1993年)。
 バイクのペダリングでは、固定された可動域で脚を回し続けるが、ランではバイクであまり使われない筋の動員をはじめ、より大きな可動域を要する。また、ペダリング中は筋への重力の影響がほとんどなく、筋は短縮性の収縮(筋が短くなりながら収縮)を主に行うが、ランでは重力に抗う必要から伸張性の収縮(筋が伸ばされながら収縮)も加わる。このとき、大腿の外側を走る腸頚靭帯(ITバンド)が伸展され大きなストレスがかかる。この靭帯と同様にペダリングで初動を生む主要な筋である大腰筋などはバイク直後では固く縮まったままのため、走り始めの姿勢の変化への適応をいっそう難しくしているのだ。
 スイム、バイクにおいて、筋は重力の影響をランほど受けない。そこにきて、ランで地球人たる証である重力の影響をいきなり受けると、まるでディスカバリーが遭遇するかもしれない異星人になったかのように、その大きなストレスに筋などの組織が一瞬狼狽してしまう状況がバイク−ラン・トランジッションに起こっている。
 トレーニングにおいて、これらの特異な生理的・力学的変化を引き出すためには、やはりレースに近い状況や疲労をトレーニングでシミュレーションしておく必要がある(”Brick Training” by Mark Allen、Triathlete、2005年8月号)。経験と適応の繰り返しがトレーニングプロセスの本質であるならば、善きにつけ悪しきにつけ多くの経験をしておくことのほうがより多くを学習でき適応を高めることになるだろう。また、経験しておくことは心理的にも有利に働くはずだ。
 具体的な方法(Hue Oら、2000年)は別の機会に譲りたいが、シングルスポーツとしてのトライアスロンに励むならば、「ブリック」こそ、その真骨頂と言えるのではないだろうか。

*注釈:もっとも、ブリック・トレーニングの命名には諸説がある。ブリック、つまり英語でレンガを積み上げるようなイメージから、バイクからランへのトランジッションのトレーニングを「ブリック・トレーニング」と呼んだとも言われる。
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スイムか、バイクか、ランか?忙しいとき、あなたならどのトレーニングを優先するか?
〜クロスオーバー効果について


 スイム、バイク、ランからなるトライアスロン。三種目を一気に楽しめる贅沢なスポーツであることが、その大きな魅力の一つであるのは間違いない。しかし、忙しい毎日を送るエイジグルーパーにとって、それぞれのトレーニングをまんべんなくこなすために費やす時間やそのやりくりは深刻な問題だ。慣れれば時間のやりくりもうまくなるし、トレーニング計画を作っておけば効率よくトレーニングを行うこともできる。
 とはいえ、それがままならぬは浮世の常。急な残業に人とのつきあい、家族行事に冠婚葬祭、天候不順に朝寝坊、やる気の低下に空腹感などなど・・・。ただでさえ窮屈なトライアスロンのための貴重な時間がますます圧縮されてしまうことは日常茶飯事だ。したがって、ままならぬトライアスリートのトレーニング欲(あるいは義務感?!)は決して満たされることはない。また、その欲求不満を会社の上司や家族にぶつけてみたところで何も解決はされないのだ。
 しかし、トライアスロンだからこそ有効なトレーニング方法があった!トライアスロンが三種目からなっていることに感謝したい。つまり、一種目のトレーニングが他種目へトレーニング効果をもたらす「クロスオーバー効果」を活用するのだ。これなら、たとえ時間がなくても、とりあえず一種目だけでもトレーニングしておけば、他の種目を実際にトレーニングしていなくてもある程度の波及効果が期待できる。
 これは日々多忙なエイジグルーパーにとって朗報だ。では限られた時間の中でただ一つだけ選ぶとしたら、どの種目を選ぶべきだろうか?スイム、バイク、ラン、どれを優先すべきだろうか?
 まず、スイムのトレーニングはバイクやランの代わりになるのだろうか。これまでの研究によると、腕の回転運動によるトレーニングが、自転車運動時の最大酸素摂取量を10%以上高め、同じ強度での心拍数を低下させたと報告されている(Lewisら、1980年)。また、スイムトレーニングがランにおける最大酸素摂取量を25%高めたという研究結果も報告されている(Lieberら、1989年、図1)。これらはいずれも、腕もしくはスイムのみのトレーニングがバイクまたはランのパフォーマンス向上に大きく貢献したことを示している。スイムだけのトレーニングでも、どうやらバイクやランのパフォーマンスにも十分プラスになるようだ。
一方で、バイクによるトレーニングが腕の回転運動時(Lewisら、1980年、SwensenとHowley、1993年)、ラントレーニングがスイム時(McArdleら、1978年)の最大酸素摂取量を高めたとする研究報告もある。これは逆に、バイクやランによるトレーニングがスイムのトレーニングの代わりになることを示していると言えるだろう。スイムの苦手な方やトライアスロンを始めたばかりの方は、スイムの代わりに積極的にバイクやランのトレーニングを行うことが有効かもしれない。
 では、バイクとランの間でのクロスオーバー効果はどうだろうか。脚でペダルを回し、脚で地面をけって前進する。どちらも脚を使う種目であるには変わりない。しかし、これまでの研究報告によると、ラントレーニングはラン・バイク両方の最大酸素摂取量を高めたが、バイクトレーニングはバイク時のみの値しか高めることができなかったと示されている(RobertsとAlspaugh、1972年)。同様に、ラントレーニングはラン・バイク両方の乳酸性作業閾値(AT)を高めたが、バイクトレーニングはバイク時のみのATしか高めることができなかったとする研究結果も報告されている(図2図3)(Weltmannら、1990年)。
 このように、同じ脚を使う種目であるバイクとランであってもクロスオーバー効果には違いがある。そして、どうやらランはバイクのトレーニングの代わりになるが、その逆は難しいようだ。これは、たとえバイクとランが漠然と同じ脚を使う種目であっても、その使い方に違いのあることが主な理由と考えられる。
 バイクにおける主働筋は太腿の前面の筋肉、大腿四頭筋だ。そして、ランにおける主働筋は太腿後面の筋肉、ハムストリングス(特に上部)や殿筋になる。ところが、ランでは重力に抗う筋肉の働きに加えて、大腿四頭筋の活動も活発になる。つまり、ランではバイクで動員される筋も多く使用するが、バイクではランで動員される筋の利用が比較的限られると考えられる。
もっとも、バイクでも上り坂などで大きなパワーを必要とする際はハムストリングスや殿筋の動員も大きくなる。したがって、ヒルクライムを積極的に取り入れることでバイクトレーニングをランの代わりにすることも可能なようだ。
 結論から言うと、やはり、スイムにはスイム、バイクにはバイク、ランにはランの特異性というものがあり、それぞれの間のクロスオーバー効果には限界がある。エリートトライアスリートを対象にした最近の研究報告(Milletら、2002年)では、トライアスロンのパフォーマンスを決める最大のトレーニングはランであり、バイクとランの間のクロスオーバー効果は見られるが、スイムとバイクまたはランの間ではいずれもその効果は認められなかった。となると、やはりランのトレーニングを優先すべきだろうか。
 また、先述のクロスオーバー効果は主に習慣的にトレーニングを行っていない者を対象としているため、ある意味、クロスオーバー効果がもともと現れやすかったとも言える。したがって、トレーニング時間のやりくりに慣れていない初心者や怪我などで三種目ともトレーニングできない場合において特に効果を期待できるものであり、それ以外の場合では、やはりスイム、バイク、ランのそれぞれのトレーニングが必要ということになる。
 三種目もトレーニングできることもトライアスロンの醍醐味だ。こんな贅沢のために時間を惜しまぬこともこのスポーツの楽しみの一つかもしれない。
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「ストレッチングの功罪」〜ストレッチングはボディケアの黄金律なのか?!

 さて、今回は「ストレッチング」について再考してみたい。トレーニング前後に当然のごとくストレッチングを行う人は多い。つい無意識に肩のストレッチングを行ったり、アキレス腱をグイグイ伸ばしたりしている姿を目にする。しかし、これは本当に必要なことなのだろうか?多くの指導者はストレッチングの重要性を唱える。ストレッチングが柔軟性を高める手段として用いられるのは確かだ。そして、ストレッチングが筋の柔軟性を高めることも事実だ。しかし、我々トライアスリートにとって、果たして柔軟性は必要なのだろうか。柔軟性の欠如が筋や腱などの損傷や傷害の原因になるとこれらの指導者は口をすっぱくして言う。だが、ストレッチングを行えば傷害を予防するとはいったい何を根拠にしているのだろうか。
 まずは、(YoungとBehm、2003年より作図)をご覧いただきたい。ジョギングあるいはストレッチングのどちらが、その直後に行ったジャンプ力や瞬発力、筋力のテストに有効かどうかを調べた研究だ(YoungとBehm、2003年)。ジョギングではいずれのテストに対してもプラスの効果を示したが、ストレッチングではいずれもマイナスの効果を示した。しかも、何もしないほうがまだマシのようだ。ストレッチング後では筋力が最大30%減少し、その減少はストレッチング後60分間も続いたとする研究報告もある(Fowlesら、2000年)。これは、ストレッチングによって、筋活動や筋収縮が制限されることが主な理由と考えられる。
 また、最近では、トレーニング後のストレッチングは、トレーニングにより疲労し炎症を起こしている筋を無理に伸張させ、さらに炎症を助長し疲労を大きくするだけだとも考えられている。運動後のストレッチングが筋肉痛の予防に効果があるかを調べた研究では、筋肉痛の発生、筋力ともにまったく効果がなかったと報告されている(Lundら、1998年)。しかも、運動前のストレッチングには下肢の傷害予防にとって何ら有効性は見当たらないと結論付ける研究報告も出されている(Popeら、2000年)。実際、柔軟性と傷害の関連性にはほとんど根拠がない(Thackerら、2004年)。むしろ、筋の柔軟性が高いと傷害率が高まったり、筋肉のパフォーマンスを低下させたりすることを示す証拠のほうが圧倒的に多いようだ。
 実は、筋の柔軟性が低く硬いほうが筋力発揮や持久力維持には有効なようだ。柔軟性が高ければ高いほど、同一スピードのランにおける酸素摂取量が高くなることが知られている。つまり、柔軟性の低いランナーのほうがランニング中のエネルギー効率がよいというわけだ。このメカニズムは、おそらく、「硬い」筋のほうがより多くの筋の「弾力」エネルギーを蓄えているからだと考えられる。
 もっとも、競技に必要な柔軟性、つまりパフォーマンスを発揮するのに必要な最低限の関節の可動域を確保しておくことは、パフォーマンス向上のために重要であることは言うまでもない。たとえば、スイムの前には肩関節(ローテーターカフ筋周辺)のストレッチングが有効だろう。しかしながら、必要以上の関節可動域(たとえば、ランナーにとっての「股割り」など)は筋自体のパフォーマンスを低下させるばかりか、傷害発生の危険性を高めることに他ならない。筋力でコントロールのできない過度の関節可動域は傷害発生の「無法地帯」となる。また、筋力の伴わない過度の関節可動域はエネルギーのロスにもなるのだ。
 このように、ストレッチングを行うことが常識と認知されている中で、実は「非常識」であるとする研究報告が後をたたない。日ごろ当たり前のように行う習慣を見直す時期に来ているようだ。
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パフォーマンスの「公式」〜「スピード・バイ・ザ・パワー」

 今回は、パフォーマンスの数学についての話だ。サイエンスというと、このような理屈に何でも押し込めがちだが、まずは図1http://2peak.comより引用)をご覧いただきたい。この図1は、昨年(2004年)のハワイ・アイアンマンで総合3位になったドイツのファリス・アル・サルタン選手のバイクパートにおけるデータだ。彼は、昨年の風の強いコンディションの中、平均時速約37km/h、4時間55分でバイクパートをフィニッシュした。その平均パワーは約290ワットだった。
 そして、図2は、このアル・サルタン選手のバイクパートの前半と後半の平均パワーを、同レース27位の同じくドイツのマーカス・フォースター選手と比較したものだ。フォースター選手は向かい風の多いバイクパート前半を平均313ワットで駆け抜けた。一方、アル・サルタン選手の前半の平均パワーは309ワットで若干低い値を示した。しかし、この前半の平均スピードはフォースター選手で約34km/hであったのに対して、アル・サルタン選手では若干低い平均パワーを示したにもかかわらず約35km/hと1km/hの違いが出た。これは同じパワーを発揮しているにもかかわらず、アル・サルタン選手のほうが効率よくパワーをスピードに変換していることを示している。このパワー効率の差は、バイクパート後半においても見られる。追い風の多いバイクパート後半では、アル・サルタン選手の平均パワーは268ワット、平均スピードは約38km/hであったのに対し、フォースター選手では平均パワーは248ワット、平均スピード約35km/hだった。
 レースにおけるパフォーマンス(スピード)を決定づける最大の要因は、発揮されたパワーである(Coyle、1995年)。しかし、このパワーが効率よくスピードに生かされないと結果的にパフォーマンスは高まらない。そこで、アル・サルタン選手とフォースター選手のスピードとパワーの関係を、「スピード・バイ・ザ・パワー:SBP」(スピード÷パワー)に1000を掛けた数字で比較してみた()。
 このように、バイク前半も後半もいずれもパワーあたりのスピード発揮、すなわちSBPはアル・サルタン選手のほうで高い傾向にある。両者とも後半のほうが高い数値を示しているのは、追い風の要素が加わりパワー効率が高まったからに他ならない。パワー効率が高い状況(たとえば、追い風や下りなど)ではSBPに大きな差は出にくくなるが、それでもアル・サルタン選手のほうが若干効率がよい。実はこれらの差がバイクでのパフォーマンスを決定づけ、結果的にアル・サルタン選手のほうが18分早くバイクをフィニッシュすることになった。通常、下りや追い風ではパワー効率は自ずと高まる(低いパワーでもスピードが高まる)。しかし、上のグラフの後半部で注目すべき点は、アル・サルタン選手は下りでも重いギアを踏んで大きなパワーを維持し、これによってさらにスピードを上げてパワー効率を高めているということだ。
 「スピード・バイ・ザ・パワー:SBP」は、トライアスロン・サイエンスで提唱するパワートライアスロン概念のひとつだ。発揮したパワーをいかに効率よくスピードにつなげることができるか。これがパフォーマンスを大きく左右する。このパワー効率を把握する目安がSBPである。もっとも、紹介したプロ選手とはスピードにもパワーにも格段の差があるのは仕方がない。しかし、SBPを比較する限り、その差は問題なくなり、効率の良し悪しだけを比較することができる(ただし、コースやコンディションによって異なる)。そして、実際にはエリート選手のSBPは高い傾向にあることがわかっている。
 同一条件で比べてトレーニングによるパワー効率の変化を捉えてもよいし、個人間で比較する場合には、体重の差を考慮する必要もある。昨年のハワイ・アイアンマンで女子総合8位のブラジルのフェルナンダ・ケラー選手のデータを見てみると、彼女は平均スピード約31km/h、平均パワー161ワットでバイクをフィニッシュした。ここからSBP(×1000)を求めると、192.5と非常に高い値になる。しかし、これにはケラー選手の体重が男性選手より軽いことが影響している。したがって、SBP公式[スピード÷パワー]に体重を掛け合わせて補正すると、アル・サルタン選手(体重約75kg)では9.56、ケラー選手(体重約50Kg)では9.62となり、これでもケラー選手のほうが高い値を示しパワー効率が高いことがわかる。実際、バイクパート前半、後半のパワーの変化を見ると、アル・サルタン選手では前半に比べ後半では約13%低下したのに対し、ケラー選手ではわずか7%しか低下していない。これはバイクパート全体にわたって効率よくパワーをスピードに変換していることを意味するに他ならず、また効率よく筋肉を使って後半の疲労による失速を抑えていることがわかる。これはベテラン選手であるケラー選手の持ち味とも言うべきだろうか。
 このように、長丁場のバイクパートではパワー効率、すなわちSBPを高めることが重要だ。これによって、発揮したパワーを効率よくスピードに変換することができ、バイクパートの後半でもペースを維持することができるようになる。また、筋の動員効率も高まって一筋線維あたりの負担(疲労)も減り、これは結果的にランでのパフォーマンスにも影響するだろう。ぜひ、改めてペダリングやバイクポジションを見直し、まずは持てるパワーを効率よくスピードに生かすためのスキルを身につけていただきたい。これだけでパフォーマンスを向上させることは間違いなしだ。
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パフォーマンスの「方程式」〜「トレーニング・マトリックス」

 まずは(Billatら、2003年より作図)を見てもらいたい。これは、エリートランナーの通常のトレーニング強度(スピード)と最大酸素摂取量(VO2max)及び10キロ走のタイムの関係を示したものだ(Billatら、2003年)。このからもわかるように、トレーニング強度が高いグループほどVO2maxが高く、10キロ走のタイムもよい。つまり、日頃から高強度でトレーニングを行っているほうが、より優れた有酸素性作業能力(エアロビック・システム)を構築することができ、結果的にパフォーマンスも高くなるようだ。
 ところで、パフォーマンスは次の「方程式」(概念式)で表される。

[パフォーマンス]
=[トレーニング強度]×[トレーニング時間]×[トレーニング頻度]×[現在のフィットネス・レベルや技術]×[年齢]×[遺伝]

 このように、年齢や遺伝に関しては変えられないとしても、パフォーマンスを向上させるためにはトレーニング強度、トレーニング時間、トレーニング頻度といった「トレーニング・マトリックス」(組み合わせ)を工夫する必要がある。しかし、トレーニング強度を高めトレーニング量を増やしたからといって、ただちにパフォーマンスが高まるとは言えない。そこが、この方程式の「解」を求めることの難しさだ。
 一般に、高強度のトレーニングを行えばエアロビック・システム(VO2max)は強化される。逆に、低強度でトレーニングを行っても、VO2maxの改善の可能性は限られてくる。また、マラソンのタイムがVO2maxと逆の相関関係にあることはよく知られている(Haganら、1981年)。つまり、高強度のトレーニングでVO2maxを高めることができれば、一般的にはパフォーマンスが向上すると考えられる。ところが、よくトレーニングされたアスリートでは、いくら高強度のトレーニングを行ってもVO2maxは高まらなかったとの研究報告がある(AcevedoとGoldfarb、1989年)。ただ、この研究では、VO2maxは高まらなかったものの10キロ走のパフォーマンスには向上が見られた。これは、高強度のトレーニングによって、VO2max(車のエンジンにたとえると「排気量」)を高めることよりもむしろ、レース中にフル稼働する糖代謝(車のエンジンにたとえると「燃費」)が改善され、乳酸の生成を効率よく抑えることができるようになったことが主な理由だ(Coyle、1995年)。
 したがって、すでによくフィットしたトライアスリートでは、単に高強度でトレーニングを行えばよいのではなく、糖(グリコーゲンや乳酸など)の代謝を改善することを目的としたトレーニング、たとえば「AT」(無酸素性あるいは乳酸性作業閾値)を用いた「パワー・トレーニング」(最大心拍数の75-90%)が有効だ。また、これまでにトレーニングをそれほど行っていないトライアスリートでは、高強度のトレーニング、たとえば最大心拍数の90%以上の強度でのインターバル・トレーニングによって、まだまだVO2maxが高まる余地があり、その改善が直接パフォーマンス向上に結びつく。経験の多いよりフィットしたアスリートのほうが、より高い強度でのトレーニングを必要とすると思われがちであるが、案外、それは正しいとは言えない。よりフィットしたアスリートでは、すでに高められるだけのキャパシティ(VO2max=「排気量」)に到達しており、それをさらに押し広げようとしても限界があるのだ。しかし、同じキャパシティでもその性能(代謝効率=「燃費」)を高めることができ、これがパフォーマンス向上に直結する。
 このように、現在のフィットネス・レベルによって運動強度をアレンジすることが必要だ。とはいえ、トレーニングが十分でないトライアスリートがいきなり最大心拍数の90%以上の強度でインターバル・トレーニングを行ったりすると、ケガやモチベーション低下の原因にもなるので注意が必要だ。したがって、比較的中程度の強度(最大心拍数の70-80%)から始めて徐々に上げていけばよいだろう。いずれにしても高強度のトレーニングがパフォーマンス向上に貢献することは間違いない。
 一方で、一回のトレーニング時間が多く、週当たりのトレーニング頻度が高いほど、VO2maxやパフォーマンスが優れていることもよく知られている。しかし、これもトレーニング強度と同様に、すでによくフィットしたアスリートには当てはまらない。この場合では、トレーニング時間や頻度を増やしたとしてもパフォーマンスが高まらないか、むしろ低下することさえ指摘されている(Mujikaら、1995年)。まだそれほどトレーニングされていないアスリートにとっては、絶対的なトレーニング時間や頻度の確保がパフォーマンス向上に直接的に結びつくが、よくトレーニングされたアスリートではトレーニング時間や頻度を増やしてもそれが無駄になる可能性が高いのだ(Mujika、1998年)。
 このように、フィットネス・レベルに応じて、トレーニングへの適応が異なることがわかる。すでによくフィットしたトライアスリートでは、トレーニング時間や頻度よりも、まずはトレーニング強度がパフォーマンス向上のためのキーファクターになる。まだトレーニングが不十分なトライアスリートにとっては、これら3要素のバランスを取ることが必要だ。しかし、これを言い換えれば、フィットネス・レベルが低いほど、トレーニングへの適応が高いと言える。つまり、年間を通じてトレーニングを継続しフィットネス・レベルを維持するよりも、いったんは落としてまた改めて積み上げるほうが、より高いピークに到達することができるのだ。年がら年中ハイレベルを維持することはできても、それは結果としてピーク・パフォーマンスの限界を押し下げていることに他ならない。
 レース・シーズンを目前に、ピーク・パフォーマンスを目指して、今一度トレーニング・マトリックスを工夫してみたらいかがだろうか。

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