ランス・アームストロングが、いかにチャンピオンであり続けたことは、サイエンスの視点からも説明されようとしている。
運動生理学の世界的権威であるアメリカ・テキサス大学コイル博士が、ランス個人について7年間にわたり追跡調査した研究報告(Edward F. Coyle,“Improved muscular efficiency displayed as Tour de France
champion matures”, Journal of Applied Physiology, 98: 2191-2196, 2005年)によれば、彼が癌に冒された期間を含め、体力的技術的には非常に顕著な変化があったと指摘されている。
ランスは自らのパフォーマンスを維持すべく、加齢にも応じたトレーニングの工夫により、栄養エネルギーを筋の出力に変換する効率を9%近く高め、減量による効果も加わって、実に18%以上ものパワーアップを達成したと言われている(図1・図2Coyle, 2005年より作図)。コイル博士によれば、その背景には筋線維組成の変化があったと指摘されている。つまり、高い筋力を発揮する速筋線維(タイプU)が減少し、その代わりにより持久力の高い遅筋線維(タイプT)が増加したことが明らかになった。
ランスは、実に過去7年間で遅筋線維の割合を60%から80%まで変化させた。また、コイル博士のラボで行ったタイムトライアル時のペダル回転数(ケイデンス)にも変化が見られ、当初はランスは好んで85回転/分で行っていたのが、近年では105-110回転/分までシフトしているようだ。これは、パフォーマンスを維持するために、より効率よく筋を使い、ペダリング技術を高めた結果を示している。